Vol.010 非売品グッズをオークション、フリマ等で入手することについて考える



インターネットオークションなどでは、普段は入手することができないタレント等の非売品グッズなどが多数売買されている。ただその多くは個人的に不要になったために処分するつもりで出品しているようだが、中には金儲けを狙って出品することも多々ある。
入手する側も、普段は入手することができないだけに、オークションサイトでこうした魅力のある商品が出品されているのを見ると「これはチャンスだ!」と思って入札し、やがてたくさんの人が同様の事を行いながら値段が競り上がっていくことになる。

だが、その中で、気になるニュースが出てきた。これは、農林水産省が発行している「栄養バランス」に関するポスターで、タレントの長澤まさみさんが出演している。これを広島県北広島町の職員が無断で持ち帰り、これを息子にオークションにかけさせたというものだ。

 ・http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070908-00000312-yom-soci(読売新聞のサイトへリンク)

通常、タレントのポスターをオークションで処分することは、多くの場合は問題ない。しかし、ここで問題になるのは、そのポスターの入手方法である。北広島町の役所に200枚が配布され、170枚が掲示に使用された一方で、残りの30枚を無断で個人的に持って帰ったというものである。通常、職場で仕事に使用する目的で職場に置いてあるものは、いかなる理由であれ、従業員であっても私的な用途に無断で転用することがあってはならないはずである。これに違反して持ち帰ったのだから、許されることではない。ましてやオークションにかけたから、その傷口を広げたことになろう。

また、最近では、非売品のポスターやグッズ全般について、物にもよるが著作権や肖像権上の制約が以前にもまして厳しくなっている(今まで以上に権利者に有利になる)ケースも多くなりつつある。

状況にもよるが、オークションサイトの中には、「ポスターやPOPなどの宣伝用タレントグッズの出品を一律全面的に禁止指定」したり、「注意喚起」したりすることを検討せざるを得なくなる場合があろう。しかしながら、「一律全面的に禁止指定」にしたところで、そのオークションサイトの管理者がそれぞれの出品物の出品画像に掲載されているポスターの絵柄だけを見て「宣伝用のポスターであるか否か」を判断することは難しい場合もある。しかも、オークションサイトは膨大な出品を抱えていて、その中のすべてについて、一つ一つが禁止指定に該当するか否かを判断するのは多大な労力を強いられる。一方で、この手の出品が(模倣品や海賊版に当たるようなものではないはずだが、これにもかかわらず)オークションサイトから一掃されることとなると、一部のマニアがオークションサイトから手を引くことにもなるほか、エンドユーザーにも心理的な萎縮効果を与えることになると考えられる。このような現象が進行するとオークションサイトも魅力のある商品が激減したり、個人出品自体が大幅に減少して業者出品が大多数を占めることになって、「オークションサイトの存在意義」が薄れることにもなりかねない。

オークションサイト(ヤフー、DeNA、楽天など)の多くはビジネスとして行われているものである。そうである以上、運営する側も収益をある程度確保していかなければならない。特にヤフーは、収益を評価するに当たってビジネス部門とパーソナル部門に分かれているようである。しかも、最近では特定商取引法上の絡みもあり、個人であっても一定以上の販売を行う場合などは法人登録しなければならず、この場合の売上評価はビジネス部門として計上されることになろう。そして先述のようにオークションサイトの出品物が販売業者によるものばかりになると、パーソナル部門の大幅縮小にもなりかねない。
(オークションが落札されることによる手数料は全て出品者負担になるため、個人が落札しても販売者が法人登録会員であれば、ビジネス部門としての計上になると考えられる)

特に、メジャーなオークションサイトは、2008年以降、「希少品の掘り出しを目的とする」よりも、「一般市場で普通に売られているような商品を、少しでも安く買えることを目指す」方にシフトしてしまっているのではないか。さらに、この流れが時を追うにつれて徐々に加速してしまっているのではないか。


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last updated: 2007/09/09 (2011/06/29 一部修正)