Vol.007 デジタル時代、私的複製規定は有名無実化するか?


コンピュータの性能向上や通信回線の飛躍的な高速化に伴い、違法な複製販売やファイル交換などが激増している。このような状況に徹底的に対処する ため、最近流通しているデジタル著作物の大半(音楽CDの一部を除く)には、コピーやダビングを禁止あるいは制限する技術を組み込んでいる。
また、コンピュータソフトウェアにも、WindowsXP、Office2003/XPをはじめ、有償ソフトウェアの多くにプロダクトアクティベーション (ライセンス認証)と呼ばれるコピープロテクト技術を搭載しているものが多くなっている。搭載されていないものでも、ほとんどのソフトウェアでは、ライセ ンス契約条項により「1本のソフトウェアでは1台のコンピュータ(または同等の効果が得られる機器)にのみインストールすることが許される」ことになって いる。

著作権法第30条には、確かに「個人的な使用目的での複製をすることができる」という、権利者による複製権の行使を制限する規定がある(ただし、30条1 項2号により、コピープロテクションなどの「技術的保護手段」を回避しての複製は、個人的使用目的であっても違法になる)。現実に「技術的保護手段」を組 み込むことは、互換性対応などでやむをえない場合を除き、ほぼ常識・必須になってきている。加えて、コンピュータソフトウェアの場合におけるライセンス契 約条項による縛りと併せ、デジタルコンテンツなどのデジタル著作物にあっては、著作権法第30条(30条1項2号を除く)が意味を持つ場面は、徐々に少な くなり、やがて「私的複製規定」というものの存在自体が(長期間をかけて徐々に)有名無実化してしまうことかもしれない。(コンピュータソフトウェアにお いて複製が許されるのは、コピープロテクトが施されていない場合を含め、私的使用目的の場合であっても、著作権法第47条の2に基づく場合に限られてしま うことになる)



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last updated: 2005/07/06